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サタディレヴュー #91    5. 14 ’11

タヴィストック人間関係研究所

 昔の学校の歴史の教科書では第一次世界大戦はオーストリアの皇太子がサラエボでセルビアの青年に暗殺されたのが発端だと説明されていた。

 今の教科書では別の説明がなされているのかと思っていたが、昔と全く同じ事が書かれている。

 しかし、現在では第一次世界大戦が単にそうした偶発的な事件によって引き起こされたものではない、と言う事は多くの人間に理解されていることだと思う。

 現代の政治の世界において、情報操作とか世論誘導とかは、いわば“常識的”な事になっている。

 新聞やテレビで報道される事の殆んどは本当なのかウソなのか我々には確かめようもない事ばかりである。

 ビン・ラディンが捕えられて、処刑されたという“話”もそういうものではないだろうか。

 私たちにしてみればビン・ラディンが今まで“生きていた”ということが解らないのだし、そもそもビン・ラディンなる人物が実在の人物なのかどうかということさえ解らないのだ。ただ“アメリカ政府がそう言っている”のを聞いて居るだけの事なのだ。

 だから自分で確かめようもない事に対しては“そう言っている人が居る”という風にだけ受け止めなければいけないのだが、残念ながら多くの大衆はそれを信じたのである。現代の政治はその信じさせる技術、真実でないことをも含めて、真実だと信じ込ませる技術、つまり情報操作、世論誘導を抜きにしては語れないものになっているのだ。

 ジョン・コールマンはその支配の源泉がタヴィストック人間関係研究所という組織である事を彼の著作で明らかにしている。

 原作の著作名はTHE  TAVISTOCK  INSTITUTE  OF  HUMAN  RELATIONS

 日本語訳題名はタヴィストック洗脳研究所 太田龍監訳 成甲書房

 第一次世界大戦以前の時代においては、イギリスの側にもドイツの側にも、たがいに戦争をしなければならないような理由は何もなかった。両国共国民の大多数は戦争を望んではいなかった。

 しかし、英国の経済界の中には当時急速に発展しつつあったドイツに対する敵意があった。その中心人物がエドワード・クレイ卿だったのだが、開戦を目論んでいたのは其の人たちなのだった。

 しかし、大多数の英国人は戦争を支持しなかったために彼らはイギリス国民の態度を変えさせるための「特別な手段」としてウェリントンハウス(タヴィストック研究所の前身)という機関を設立したのだった。

 当時最高のプロパガンダ創作者ノースクリフ卿は新聞界の大立者でありロスチャイルド家と姻戚関係を結びドイツを憎んでいた。

 ノースクリフ卿がやったことは当時のドイツ皇帝ウィルヘルム二世に対する徹底的な人格攻撃であった。

 当時のドイツは事実上脅威ではなかった。皇帝は好戦的で勇壮な戦士でもなかった。それどころか彼は五年間で三度軍縮を励行したので(ドイツの)軍隊は殆んど使い物にならなかった。

 そのような事実を知りながら、ノースクリフ卿は彼を“世界支配に執着する”“誇大妄想狂”“ヨーロッパの狂犬”などとお抱えのメディアに呼ばせ続けた。ウェリントンハウスはよだれを流す狂犬、猿さながらの生き物としてウィルヘルム二世を描くように風刺漫画家に命じた。それらは手軽な風刺漫画の書籍として売り出されたがすぐに低俗な新聞が飛びついた。その漫画は内容が乏しく出来栄えは貧弱だった。

 新聞の威力を示す為にノースクリフはメディアにその漫画本を絶賛する記事を書かせた。首相のアスキス卿は茶番劇そのものの序言の執筆を依頼された。ウィルソン大統領はレイマーカーズというオランダ人“芸術家”の著者がその本の宣伝のために訪米するとホワイトハウスで歓待し、漫画を絶賛した。

 伝説の人気雑誌「パンチ」までが参入しウィルヘルムを徹底的に愚弄した。どんな雑誌もウェリントンハウスから注がれる汚水の奔流を記事にせざるを得ないようだった。

 これこそ生粋のプロパガンダである。効果は直ちに現れた。人々は皇帝を「縛り首にすべきだ」と声高に唱え聖職者の一人に至っては「ドイツ人が皆殺しにされればドイツを許す」と言いだす始末だった。

 皇帝のことを何も知らないハリウッドまで皇帝非難に飛びついて、数々の皇帝を貶める映画を世に送り出した。

 それは史上最悪のプロパガンダ攻勢であり英国政府の手によって英国内のみならず最大の眼目である米国においても仮借なく実行された。イギリスはドイツを敗戦に追い込むために米国を当てにしていたからである。そしてウェリントンハウスの手法が頂点を極めたのは、議会を説得してドイツに宣戦布告をするようにとウィルソンに手ほどきした時だった。ヨーロッパで荒れ狂っていた戦争には介入しないという公約を掲げて大統領選に勝利したウィルソンを懐柔できたのだから新しい世論形成技術の面目躍如と言えよう。世論調査の質問は見事にカモフラージュされていた。大衆は質問の真意を理解出来なかったばかりか、政治の変化も理解できなかったのだ。

 コールマン博士によれば上に述べた第一次大戦時の世論誘導の手法はその後英米が関与した全ての戦争適用可能な「方程式」となったという。イラク戦争を前にして、メディアがフセイン大統領にやった事はかって、ウィルヘルム二世に対してなされた事と全く同じだったという。

 ウェリントンハウスが確立したこの手法は第一次大戦後に設立されたタヴィストック人間関係研究所に受け継がれた。そして現在では、膨大な人間と予算を使って数多くの研究所や大学をそのネットワーク内におさめていると言う。

 そして、その手法はますます磨きをかけられて、“洗練された”ものになっていった。そしてその効果は戦時ばかりでなく社会のあらゆる事象に関しての大衆の意志や欲望を支配するまでに至っている。

 われわれ日本の社会に於いては有難い事にタヴィストックの支配は英米程徹底してはいないように−少なくとも表面的には−思われる。しかしながら私たちが自分自身から発していると思っている意志や感情や欲求が実はタヴィストックによって“条件づけ”されているものだ、と言う事が少なくないのだ。

 イギリス支配層はかれらが世界中にくもの巣のように張り巡らした巨大なネットワーク−『見えない政府」と言われている−を通じて世界中の人たちの“意識”を根底からからめ取ろうとしている。

 アメリカにおけるかれらの仕業はほぼ完了したと思われるから、かれらの攻撃は日本に対して本格化して来る筈だ。

 かれらの忠実な手先として働く人たちの言動を私たちは注意深く監視して行く必要があるだろう。

 日本人はこれだけ英語教育に熱心なのに、幸いなことに英語の良く出来る人は少ない。かれらに何を言われても“ワタシ ワカリマセン”と言っていればいいのだ。

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